整形外科で使用する痛み止めの種類について2023-01-20
平野区の皆さんこんにちは。院長の東です。新年になり、寒さが厳しい日々が続きますが、この季節、関節痛や神経痛が寒さによってひどくなりやすい時期でもあり、整形外科の患者様にとっては、正直1年で一番つらい季節だと思います。
そんな中、整形外科治療の中で欠くことのできない薬が、痛みを和らげるいわゆる鎮痛剤ですが、強さや作用部位によって、いろいろな種類があるのをご存知でしょうか?
今日はそんな薬について、少しお話できればと思います。
1 非ピリン系鎮痛剤(カロナール)
最近コロナでの解熱薬として有名になり、一時薬局で手に入らなくなるなど有名になった昔からある鎮痛剤です。副作用が少なくとても使いやすい薬ではありますが、解熱効果は強いのですが、鎮痛効果がやや弱く、炎症を抑える効果は弱いと言われていますので、単独で整形外科の治療に使うことは少ない薬です。昔からある薬なのに、実は作用機序がよくわかっていない薬ですが、脳や中枢の疼痛抑制系に作用するのではと言われています。
2 非ステロイド系消炎鎮痛剤(ロキソニン、セルベックス、ボルタレンなど)
いわゆる整形外科でいうところの痛み止めといえばこれです。その名の通り、消炎鎮痛効果が比較的強く、即効性もあります。痛みの部位で発生する炎症をおこす化学物質(プロスタグランジン)の産生を抑え、消炎鎮痛効果を発揮します。ただ胃粘膜障害や腎機能障害をおこすことがあり、そういった疾患を持っている方の長期の使用には注意が必要です。
3 神経障害疼痛治療薬(リリカ タリージェなど)
この薬は比較的最近よく使われるようになった薬で、痛みの部位に直接効くというよりは、痛みを脳に伝達する経路のカルシウムチャンネルを阻害することにより、疼痛効果を発揮します。ですので、坐骨神経痛や頸椎神経根症などの神経を介する痛みには、より効果を発揮します。ただ副作用もそれなりにあり、人によってはふらつきやめまいなどの症状を伴うことがあり、適応は上記①②よりも慎重に行う必要があります。
4 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬(サインバルタ)
③の薬と作用機序が少し似ていますが、疼痛を伝える経路のうち、下降抑制系(疼痛の感じ方を抑える部位)の作用を増強することで、鎮痛効果を発揮する薬です。似たような成分で軽いうつ病の治療に用いる薬もあります。急性ではなく主として慢性腰痛や関節痛などの慢性の疼痛に使用しますが、嘔気や眠気など副作用の報告もそれなりにあります。
5 弱オピオイド薬(トラムセット トラマール ツートラムなど)
オピオイドとはいわゆるモルヒネなどの麻薬のことであり、その効果を弱めて使いやすくした薬です。鎮痛効果は高く、①②③にて効果の少ない場合、追加として使用することが多いですが、副作用(嘔気や便秘)などもそれなりにあり、使用には比較的注意が必要です。
番外編
貼る痛み止め(ジクトルテープ)
これはいわゆる湿布とは異なり、口から飲んで胃腸から吸収させる代わりに、皮膚に貼って、皮膚から薬を吸収させる薬で、基本的成分は②の非ステロイド系消炎鎮痛剤と同じです。ですので、湿布と違い痛い部位に直接貼るのではなく、基本的に皮膚からの吸収が多く、貼りやすい前胸部などに貼ります。この薬のメリットは、どうしても飲む薬だと飲んだ直後に血中濃度が上がりすぎ切れかけになると下がるので、時間によって鎮痛効果が強くなったり弱くなったりするのですが、その効果を平たん化し、鎮痛効果が維持されやすく副作用の頻度を減らせると言われています。最近当院でも使い始めましたが、②の薬で効果が少ないが、③④の薬を使うほどでもない患者様に投与することが多いです。
このようにいろいろな種類がある痛み止めですが、基本強さが増すほど、副作用の報告も多くなるので、いきなり強い痛み止めを使うのはあまりおすすめできず、効果や体調などをみながら、医師が調整していくのが一般的だと思います。
薬の調整には、患者様からの情報(どのくらい効果があった、こんな不具合があった)がとても重要になるので、診察を受けていただいて、遠慮せず積極的に症状の変化をおしゃっていただいたほうがいいですので、診察中はお気軽にお話いただければと思います。
以前から皆さんに御覧いただいていたブログですが、今年はできるだけ医学的なお話に話をしぼって、より皆さんにお役にたてる情報を、随時発信していきたいと考えています。
これからも、あずま整形外科リハビリテーションクリニックをよろしくお願いします。
院長 東 隆司